採用人数を決める際に必要な「要員計画」の運用方法とは

どの部門に何人雇い入れるかをあらかじめ決定する「要員計画」は、その後の採用活動を大きく左右します。 自社の課題や目的に合った要員計画ができれば生産性の向上が期待できます。一方で、実態と合わない要員計画では、理想的な効果が得られません。場合によっては必要以上に採用コストがかかるなど、思わぬデメリットが発生するケースもあるので注意が必要です。 今回は、採用人数を決める際の「要員計画」について解説します。

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「要員計画」が採用人数を決めるときのカギを握る

要員計画とは、事業計画、経営戦略から「どこに、何人、どんな人材が必要で、どうやって集めるか」を計画することを指します。新規採用のみならず、人事異動や能力開発も要員計画の手法として組み込まれることが多いです。特定の手法に限定することなく理想的な人事プランを練ることが特徴です。

要員計画と似た言葉に「採用計画」がありますが、これは採用のみに焦点を当てています。人事異動や能力開発など既存社員に対するアプローチは含まれておらず、新規での人材獲得にのみ注力しています。

また、「人員計画」は要員計画以上に広義を指す言葉です。長期的事業計画や労働市場を見据えた展望をもとに一から人事計画を策定することが「人員計画」であり、それを実際の行動に移すのが「要員計画」とイメージすると良いでしょう。

「要員計画」を策定するときに必要なフロー

ここでは、要員計画を策定する際のフローを紹介します。フロー通りに進行することで、理想とギャップのない計画を立てやすくなります。

1.社内の現状分析を行う

まずは、社内の現状分析からはじめます。事業計画や経営戦略を見直し、それに合致した社内人員になっているか確認しましょう。

特定の部署に人員が偏っていないか、部署ごとの多様性や確保されていてイノベーションが起きやすい環境が整っているかなど、多角的な視点でチェックするのがおすすめです。足りない部分があれば、そこが自社の課題となります。

人数が足りないのか、スキルが足りないのか、モチベーションやエンゲージメントが足りないのか、もう一歩踏み込んで分析してみましょう。

2.要員調査を実施する

前項で判明した自社の課題を踏まえて、要員調査を実施します。部署ごとに必要とされる人員数を量的に可視化し、最適化することにつながります。

要員調査の手法として、「トップダウン方式」と「ボトムアップ方式」が挙げられます。

トップダウン方式とは

トップダウン方式とは、事業計画や経営戦略など、自社全体の方針から理想的な人員数を把握する手法です。人件費や採算について厳密に計算したいときに便利な手法であり、経営層や人事部主導で要員調査できることも利点です。

また、人件費だけでなく損益分岐点、労働分配率、売上高からも逆算できます。大きな組織で用いられることも多く、属人性のない公平な判断が可能です。

ボトムアップ方式とは

ボトムアップ方式とは、必要な業務を実行するために必要な人員数を把握する手法です。人件費など予算をもとに組み立てるトップダウン方式とは異なり、業務量をベースに据えることが特徴です。

課で必要な人数から部全体の人数を割り出し、部で必要な人数から視点全体の人数を割り出し、と規模を大きくしていくことで、最終的な人員数を計算します。

可能な限り、トップダウン方式とボトムアップ方式のどちらも実行しましょう。トップダウン方式だけでは、現場の意向にそぐわない数字上の要員計画になりやすく、実務が回らない(もしくは過剰配置になる)などの課題が生じます。

反対にボトムアップ方式では、予算度外視の要員計画になりがちです。どちらの考えもバランスよく組み込み、経営層も現場も納得できる計画にすることが大切です。

3.要員調整を行う

次に、必要な人材をどのように確保するか手段を決定します。新卒・中途、正社員・パート・アルバイト・契約社員・派遣社員など、雇い入れの手法だけでなく雇用形態についても考えます。

採用手法も下記のとおり多岐に渡るので、特に母集団形成しやすい手法を考えるのが理想です。

・転職サイト(求人サイト)

・転職エージェントおよび人材紹介会社

・派遣会社

・ハローワーク

・求人誌

・リファラル採用

・SNS採用

・ミートアップイベント

・ダイレクトリクルーティング

・大学や専門学校のキャリアセンターへ求人掲載

・フリーランス仲介サービス

一度に大量の人員を確保したい場合は、転職サイトなど多数の求職者の目に触れる媒体を使うのがおすすめです。反対に、ペルソナと合致する特性を重視した質の高い採用活動をしたいのであれば、ダイレクトリクルーティングのようなスカウト型の採用を考えると効果的です。

4.要員計画を策定し実行する

人員確保の手段が決まったら、誰がどのようにして実行に移すかを考案します。一般的に、新卒採用は本社の人事部が担当することが多いです。企業説明会や多数の面接など採用工数がかかるので、採用に専念できる人事部などのチームが最適です。

一方、リファラル採用やダイレクトリクルーティングのように現場社員の協力が欠かせない採用手法も存在します。現場にすべて任せるのは避けるべきですが、人事部と現場が連携しながら採用活動できればより効果が高まります。

策定した要員計画が適切かを確認する方法

最後に、策定した要員計画が適切か確認する方法を紹介します。

要員計画は、事業計画や経営戦略の移り変わりとともに変化するものです。現場のニーズと照らし合わせながら定期的に見直し、必要に応じて練り直していきます。

要員計画と実績を比較し分析を行う

要員計画と実績を比較し、分析しながら改善点を探す方法です。より効果を可視化しやすく、PDCA分析をする際にも役立ちます。

万が一ズレが生じていたら、要員計画自体を見直すか、採用手法を見直すかを検討しましょう。ズレがなく理想通りに進んでいれば、ほかの部署にも応用するなど、より高い精度での要員計画実施を考えます。

現場へのヒアリングを行う

配置した現場へ、採用した人員についてヒアリングを実施する手法です。現場のニーズと合った人材が採用されているか、選考時の印象と配属後の印象にギャップがないかなど、個人単位で見直しましょう。ズレがある場合、採用基準や選考の評価シートにミスマッチが生じている可能性があります。

最悪の場合、採用した人が早期離職してしまうおそれもあるので、早めのフォローアップを実施します。また、「採用後も人員数が足りない」などの声が挙がれば、再度要員計画を策定しましょう。

採用ターゲットを再度明確にする

分析やヒアリングをもとに、再度採用するターゲットを明確にする手法です。採用したい人材像をペルソナとして設け、知識、実績、経験、スキルだけでなくカルチャーフィット具合や行動特性なども見ながら選考の現場に落とし込みます。

採用ターゲットを可視化しておけば、面接担当者との相性や一方的な好き嫌いだけで合否が決まってしまう「属人化」を防げます。採用のフローを平準化し、誰が面接を担当しても理想に近い人材を採用しやすくなるので、ぜひ取り入れてみましょう。

まとめ

要員計画は、中長期的に会社を見据えながら自社戦略に合った人材確保に貢献する手法です。中長期的な視点でミスマッチを軽減できれば、早期離職による慢性的な人材不足や採用コストの増加を防ぐことにつながります。採用の方針も決まりやすく、現場の声も経営層の声も計画に反映できるので、ぜひ取り組んでみましょう。

社長メシ」では、要員計画に合わせて人材を採用するお手伝いをしています。カルチャーフィットするクオリティ重視の採用をしたいときや、特定のスキルをもつ優秀な人材を採用したいときにはぜひご利用ください。