【経営者インタビュー】新卒採用に革新を起こす「社長メシ」。その誕生秘話とヒットの裏側にせまる

選考手法(選考する)

株式会社ユナイテッドウィル

代表取締役社長

佐々木 拓己 (ささき たくみ)

1978年、青森県生まれ。1999年、アルファグループ株式会社に入社。携帯電話の営業を担当し、2年目でグループトップの営業成績をあげる。その後は営業部長として企業成長を牽引し、同社のジャスダック上場に貢献。2007年、インターネット決済会社に参画。事業部長やCOOとして経営に携わる。2010年、株式会社ユナイテッドウィルを設立。HR事業やSES事業など、ITと人材を軸としたビジネスを展開する。2018年、CtoC型の採用マッチングサービス「社長メシ」をリリース。従来の採用手法を変革するサービスとして、メディアや業界の注目を浴びている。

即戦力採用
優秀な人材採用にお困りではないですか?

独自の採用手法とCtoCの潮流を融合させたソリューション

―「社長メシ」が生まれた経緯を教えてください。

きっかけは当社の新卒紹介事業です。このサービスを2016年に始めたところ、さまざまな課題に気づきました。

ひとつは、人材紹介業界の課題。学生は就活の軸が定まっていないので、周囲の助言に影響されやすい。それに乗じて、悪質な紹介会社は手数料の高い企業に入社させようと仕向けていました。結果としてミスマッチが起き、短期間で離職する若者が続出していたのです。

もうひとつは、中小・ベンチャー企業の課題。多額の費用をかけて求人媒体に掲載しても、大手企業のように人材が集まらない。学生にアピールするためには、経営トップが前面に出るべきではないか? そこで、社長の想いを低コストで伝えられるツールをつくろうと思い立ちました。

―食事会で社長と学生をつなげる仕組みは、どこから着想を得たのですか?

 もともと会食の大切さは感じていたんですよ。当社の選考プロセスは、書類や面接だけではありません。必ずインターンシップに参加してもらい、最終日に社長の私と会食します。お酒を飲みながら率直に語りあい、ミスマッチを防ぐわけです。

 スマホアプリについては、社会の潮目を読みました。当時はメルカリをはじめ、CtoCマッチングアプリの成長期。今後は人材市場でも中間業者が減り、ダイレクトリクルーティングが主流になっていく。だとすれば、悪質な搾取をなくして、中小・ベンチャー企業が優秀な人材を採用できる環境を整えたい。そんな想いから、このアプリを開発しました。

SNSから人気に火がつき、学生のクチコミが広がる

―「社長メシ」のリリースは2018年です。立ち上げ当初は苦労しましたか?

トライ&エラーは重ねましたが、苦労とは感じていません。あえて困難をあげるなら、学生にアプリをダウンロードしてもらうことでしょうか。いまでこそ当たり前ですが、氏名や大学名など情報登録の心理的ハードルが高かったのです。最初は紹介事業でつながりのある学生に声をかけ、食事会に直接誘っていました。

―現在の登録者数は約6万人と聞きました。成長軌道に乗せた方法を教えてください。

人気に火をつけてくれたのはSNSです。食事会に参加した学生がTwitterやInstagramで「社長メシ最高!」なんて投稿してくれました。オンラインの情報拡散だけでなく、実際のクチコミでも評判が広がったようです。

その後、マスメディアの後押しも受けました。就活スタイルの変化を示すサービスとして、テレビや新聞などで「社長メシ」が取り上げられたのです。そのあたりから、登録者数が加速度的に伸びていきましたね。

初期費用・月額費用ゼロ。採用コストを劇的に低減する新プラン

―ほかに人気を博した要因はありますか?

コンセプトは当初から好評だったので、アプリの細部を改善しました。たとえば、レビュー機能の追加。社長が一方的に学生を評価するのではなく、学生からも社長を評価できるようにしました。互いに名前も顔写真も出しているので、無用なトラブルは起きません。

また、企業側の手間を省けるように変えました。食事会の後、採用選考に進みたいかどうかを学生に明示してもらう機能を追加したのです。人事担当者が全参加者と連絡先を交換し、個別に意思を確認する必要はありません。

―会食後、すぐに内定を出すケースはないのですか?

ありますよ。恋愛と同じで、お互いの気持ち次第。当社が提供するのはマッチングの機会です。内定者の有無や参加人数にかかわらず、食事会1回あたり5万円(税別)の報酬しかいただきません。もちろん、学生は無料です。

―別途、初期費用や月額費用などはかかりませんか?

飲食費をのぞけば、一切必要ありません。以前は月額プランもありましたが、コロナ禍を機に料金体系を変えました。食事会を開催しづらい時期に、月額費用をいただくのは申し訳ないですから。 

とはいえ、対面の重要性は不変です。どの会社の社長も「実際に会わなければ、見極められない」と口をそろえています。

経営トップの姿勢が企業イメージを左右する

―今後のサービス展開について教えてください。

近いうちに オファー機能を実装します。いまは学生から食事会に応募する流れなので、企業側は参加希望者の中からしか学生を選べません。そこで、すべての会員学生に直接オファーできる機能を追加する予定です。

次に見据えているのは、経営者向けのサービス展開です。「社長メシ」に登録している社長は約1,000名。交流会やM&Aのプラットフォームなどを低コストで提供すれば、魅力的なコミュニティになるでしょう。

―最後に、全国の経営者へメッセージをお願いします。

学歴フィルターと人事まかせには限界があります。だから、どんなに忙しくても、学生と直接会ってください。社長が学生とひざを突きあわせる機会をつくれば、企業イメージも向上するはずです。

そして、「社長メシ」には社会貢献性があります。次世代を担う若者と夢やビジョンを語りあい、経験を共有する。「社長メシ」を通じて学生の視野も広がり、成長のきっかけになると信じています。